〔短編集〕椎名高志「(有)椎名大百貨店」



8か月前の短編集レビュー( 〔短編集〕椎名高志「GSホームズ 極楽大作戦!!」)では「絶対可憐チルドレン」が打ち切りにならないか心配です、なんて言ってたんですが、いつの間にかアニメ化したり、椎名先生の念願であるサンデーの表紙を飾ったりと大躍進ですよ!
「絶チル」のアニメ化に伴って小学館が椎名先生をプッシュしようとしてるのが最近の新刊ラッシュで見てとれますね。先月の「絶チル」ガイド、「MISTERジパング」の文庫版、「絶チル」と「GS美神」(こっちは再販だけど)の文庫版と、これでもかって感じで出まくってますね。
怒涛の椎名作品新刊ラッシュの中で私が最も注目してたのは「(有)椎名大百貨店」です。
前作の短編集から4年以上空いて、これでなんと5冊目の短編集ですよ!
「一番湯のカナタ」が打ち切りになってから「絶対可憐チルドレン」が何度も何度も練り直されてサンデーで連載されるまでの、おそらく苦しい時期に生み出されたであろう短編たち。なんですが、どれも「やっぱり椎名先生スゲェ!」と唸らされる名作ばかりでした。

いつものように、あらすじ+軽めの感想を書いていきますので、気になった方は手に取ってみてください。


GSホームズ 極楽大作戦!! 血を吸う探偵



モリアーティー教授との戦いで死んだと思われていたホームズが生きていた―
ワトソンは歓喜する。死闘から6か月経ってようやくホームズとの再会が叶ったのだ。
しかし、ホームズは可笑しなことを言う。「あの日確かに僕は死んだ。
そして今は吸血鬼になることで生きながらえているのだ」と。
あまりの事態に驚きを隠せないワトソンは、
記憶喪失の少女、エリス・ブラドーの出現によってさらなる混乱を強いられる。
彼女が今回の依頼人であり、ホームズの命の恩人だというのだ。
そして"ブラドー"の名が示す通り彼女もまた―

状況が把握できないワトソンに向かってホームズは言う。
自分を救ってくれたエリスの願いは何としても叶えてあげたい。
その願いは捕らわれの身となったピエトロ・ドブラドーを助けることだと。
つまり、それが今回の"依頼"なのだ。ワトソンは苦笑いしながらこう思う。
「また未発表するしかない話になりそうだな…」
怪事件の果てに、ホームズは人間に戻れるのか?!


GSホームズシリーズ第2弾、今回はピートがゲスト出演です。
前回のマリア編よりもこっちの方が好きです。てか、今までの椎名先生の短編の中でも三指に入るくらい好きかもしれない。エリスのデレがたまらんとかでは決してなくて(ホントかよ)、最後の数ページが泣けたのがもうね、最高でした。帯に書いてある通り、椎名先生は「短編の名手」だな、と。
もし第3弾があるとしたら、ゲスト出演できそうなキャラって神族、魔族くらいですかね。あとは美神親子だけど…美神が来たら「GS美神」になっちゃうよなぁw個人的には小竜姫様がいいな、とか勝手に思ってます。

ちなみに、カバー折り返しの4コマは前の短編集と同じでホームズの推理シリーズになってますw今回は美神と薫も出演してますよ。


パンドラ



二浪決定!そんでもって彼女に振られる!etc…
とにかく悪いことしか起こらないと嘆く少年・海老名修介に願ってもない幸運が!!
突如、空から降ってきたのは…美少女!!!!
パンドラと名乗る彼女は言う。「うちはお前さまのもの」だって?!
喜ばずにはいられない修介は「神様からのプレゼントだー!!」と叫んで…
みたものの、気味が悪いといってパンドラを追い払ってしまう。
「捨てられて……しまったんですね」
絶望するパンドラ。そして、彼女の腕から「箱」が外れ―

「あんな可愛い子、やっぱり捨てられない!!」
飛んできた修介の前に立っていたのは…パンドラ―じゃない。
「カタストロフィ」と名乗ったそいつは言う。
お前がパンドラに優しくしなかったから人類を滅ぼす、と。
美少女のいる生活(と世界平和)を守るため、修介の不幸パワーが爆発する!!


「空から降ってきた人間でない女、最高!」
そんなコンセプトで描かれてるこの作品ですが、ちゃんとしたテーマも用意してあるのはさすが椎名先生と言ry
全三話と、この短編集の中で一番ボリュームがあります。1話だけを見ると、ほのぼのしたラブコメに見えなくもないんですが、2話、3話と進むにつれて話のスケールが大きくなって最後は…と何気に重い話にシフトしてるような気がします。男共がバカやってるので忘れそうになりますがw、ただ笑えるだけの話じゃないんですよね。
パンドラも好きですが、先代の方が好きです。大人っぽいしショートだし、何より「いつか…また。」にやられました。こういうセリフに弱すぎる。
もし続きがあっても悲しくなるだけなんで、ここで打ち止めでいいのかもしれませんね。

一言だけ文句を言わせてもらうと、冒頭で海老名くんに彼女がいた事実があるって時点で、彼の元にパンドラが舞い降りてくる資格はないですよ!!(血涙)


TIME SLIPPING BEAUTY



あれは一体何だったんだろう。退院したばかりの芳山悟郎は考える。
事件に巻き込まれ、腹部を刺された彼が見たのは、犯罪者を倒し、
その後に何かを叫びながら文字通り"消えていった"謎の少女の姿。
あんな事は普通じゃ起こり得ない。あれは一体…
そんな彼の疑問に答えるかのようにその少女・時輪コヨミが現れる。
そう、消えていったあの時の姿のままで。

"それ"を見てしまった芳山は2つの事実を知ることになる。
1つはコヨミの、いや、時輪家の秘密。
彼女の家は代々、不思議な力を持っている。
その力で時空を超えて過去へ行き、失われるはずだった命を救っているのだと。
そして、もう1つの事実は―


なんていい読みきりなんでしょう。椎名先生の短編の中で一番好きになりました。
"誰よりも多くの人を救っているけど、1人でも救えなかったことに罪悪感を感じている"そういうキャラクターは無条件で好きになります。(「からくりサーカス」の鳴海もそうですよね。)そんな優しさを持ってるコヨミはそれだけでもう素晴らしい主人公だって言い切れます。そして、そういった葛藤から救われるシーンはたまらなく好きです。たった数十ページの作品なのに思わず泣くところでした。
椎名先生、何で講談社に引き抜かれなかったんだろうと思うくらい完成度が高いので本当にオススメです。


蜘蛛巣姫



首が斬り落とされ、無惨にも殺されてしまう―
最悪の夢から覚めた田所八郎太はそれが悪夢でなかったと知る。
首と腕には確かに斬られた痕跡と、それを縫合した跡があった。
どうして生きているのか。
そんな疑問が頭をよぎった刹那、視界に映ったのは一匹の妖。
それは噂に名高い、人食いの妖怪・ヤツメだった。のだが、
どうにもこの妖、人間くさいことこの上ないのだ。
「惚れたから生き返したけど、女がいるなら一緒に死んでやる」などと言う始末。
ならば、と八郎太は願いを申し出る。これから一緒に生きても構わないから
その代わりに捕らわれた姫を助けるために力を貸して欲しい、と。
八郎太とヤツメ、そして姫。三角関係の行方は?!


終始ギャグっぽさが漂っているので読むとリラックスできるというか気が抜けます。こういう読み切りも椎名先生の持ち味が存分に活かされているので、1冊に1つでも入ってると嬉しいですね。
例によって強い女の子に男が振り回されるっていう黄金パターンなんですが、ちゃんと八郎太にも見せ場(?)があります。最初見た時は思わず噴きましたが、こういうバトルもありかとw
私にしては珍しく黒髪ロングの姫よりもヤツメの方が可愛いと思いました。ふんどしがいいの…かなぁ。(知るか)


「パンドラ」が3話、「TIME〜」が2話構成なので、全4篇とラインナップは決して多くないんですが、どれも完成度が高いので胸を張ってオススメしたい1冊になっています。
美神の頃からのファンの人も、「絶チル」でファンになった人も、「絶チル」のアニメから入った人も、もっと言うと「椎名高志」って誰よ?と思った人も、この記事を読んでちょっとでも気になった方は手にとって欲しいですね。あとがきからも椎名先生の作品に対する想いが伝わってくるので、ファンならとにかく必見です。(そればっかりだな)

椎名先生自身が「また短編集出したい」と仰ってるうえ、こんなに面白い話をバンバン読まされると「早く新しい短編が読みたい!」と思うんですが、今はようやく勢いに乗ってきた「絶対可憐チルドレン」を応援しようじゃありませんか。噂ではチルドレンが成長するとかしないとか…もし本当ならスゲー楽しみなんですが、ちょっと話が重くなってくるの気がするので、息抜きとして傍らに「(有)椎名大百貨店」を置いてみてはどうでしょう?(強引すぎる)
短編好きは読まないと勿体ない!
「(有)椎名大百貨店」は椎名先生の凄さに改めて気付けますよ!!



  
 
 

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