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「宇宙兄弟」 ムッタとケンジの握手

 「宇宙兄弟」最新16巻が面白いです。言うまでもありません。
16巻は、月を目指すチームへ参加することを認められたムッタと、同じチームにいる親友のケンジを中心に、訓練の様子が描かれています。
当然のように、2人は今までのように息を合わせて協力し、与えられた課題を順調にクリアしていきます。水中での訓練によって月の重力を疑似体験したムッタとケンジは、自分達が月へ行ける手ごたえを強めながら、友情も深めていきます。

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小山宙哉「宇宙兄弟」18巻

 いい画です。言葉にしなくても互いに支え合えるのが、ムッタとケンジの友情の形であることは今までを見れば明らかです。
しかし、「2人のうちどちらか1人しか月に行けない」という残酷な事実が告げられると2人の関係に変化が訪れます。

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小山宙哉「宇宙兄弟」18巻・

 ムッタとケンジは手を取り合うことができません。このシーンは今までの二人を振り返ると信じられませんでした。嘘でもいいから手を取って欲しかったと思わずにはいられません。
今回はムッタが先に手を伸ばしたので、ケンジが断っていますが、おそらく逆でも同じことになっていたはずです。

 私は先ほど、ムッタとケンジが手を取り合わなかったシーンについて、「今までの二人を振り返ると信じられない」と言及しました。今回のような「手を貸す」状況は初めてですが、作品を通して二人はよく握手をしています。
ムッタとケンジはよく握手をしているという印象があったから、手を取り合わない、つまり、握手の形が成立しないことが信じられなかったのです。

 16巻を読み終わると、「ムッタとケンジは今までどれだけ握手をしていただろうか」と気になりました。また、単純にまた最初から読み返したくなったこともあり1巻から16巻まで通して読みました。すると、握手についてちょっと面白い発見がありました。
独自の解釈も含めての発見なので、法則として成立しているかどうかは怪しいです。けれども、紹介しないよりはした方がいいだろうと思うので、「そうかもしれないな」という程度に見てもらえれば嬉しいです。
 ということで、握手の歴史を順番に見ていきます。

・記念すべき初握手

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小山宙哉「宇宙兄弟」1巻・

 記念すべき初の握手は二人が出会って間もなくの頃です。ここでは、ケンジから握手を求めています。
宇宙飛行士候補の2次審査会場で出会ったムッタとケンジはすぐに意気投合し、10分話しただけで「ムッ君」「ケンジ」と呼び合う仲になります。会ったその日に親友になれる関係だったからこそ、16巻の例のシーンは余計辛く感じたのかもしれません。
 本筋とは関係ありませんが、今見ると絵の雰囲気が少し違うように見えます。初期から変わっていないような印象を持っていたんですが、そんなことはなかったようです。

・2度目の握手

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小山宙哉「宇宙兄弟」1巻・

 2度目の握手は、自慢の肺活量テストで凡ミスをしたムッタが、ケンジから激励の一言を受けた直後です。「自分は一番になれない」と落ち込むムッタはケンジに後押しされていなければ、日々人だけの力では試験を乗り越えることは難しかったかもしれません。ケンジは偉大です。
ここではムッタから握手を求めています。

・3度目の握手

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小山宙哉「宇宙兄弟」1巻・

 3度目の握手はケンジからです。
2回目と同じ話(#5)の中で握手をしたせいか、ムッタが思わず「何回握手するんだ」と言ってしまっています。#5はせりかさんの初メインエピソードなので見落としていましたが、1話で2回握手していたこともあったのかと驚きました。確かに1話で2回は多いです。

・4度目の握手

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小山宙哉「宇宙兄弟」1巻・

 携帯を失い、皆の輪に入れないムッタ。そこへのケンジからの思わぬプレゼントとして、せりかさんのアドレスが記されたメモが!ムッタ、感謝の握手です。これが4度目でした。
こうして見ると、ケンジは「共に頑張ろう」という意味合いでムッタに手を差し出していますけれど、ムッタはケンジに対する感謝と共に手を差し出しているように見えます。同じ握手でも、よく見ると違うことに今更気が付きました。
ここではムッタから握手を求めている……ように見えるので、そう解釈しました。手が描かれていないため微妙なところです。どうなんでしょうか。

・5度目の握手

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小山宙哉「宇宙兄弟」2巻・

 5回目の握手は、3次審査の3日前に交わされました。この時点でムッタは既に、ケンジの家に友人として迎えられる程の信頼を得ています。ここで聞いた「かぺ」が、ケンジとムッタの友情を更に強めている気がするから不思議です。この作品の持つ言葉の力の強さが大好きです。
この握手はケンジからです。ケンジから握手を求める時は、やはり、共に闘い抜く決意を込めているように見えます。

・6度目の握手

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小山宙哉「宇宙兄弟」3巻・

 問題の6度目の握手は、3次審査で別のチームになったケンジとムッタが別れ際にしています。
今までの経緯を考えるとケンジから握手を求めているように読めるのですが、この握手は2人の手が同時に差し伸べられた、と解釈したいです。手が描かれていないのと、かなりこじつけですが、いい加減ムッタも握手を求められるタイミングがわかってきて同時に手を差し伸べた、という理由を付けてみました。やはり苦しいでしょうか。

・7度目の握手

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小山宙哉「宇宙兄弟」5巻・

 3次審査でムッタとケンジは別グループだったので、間が空いて5巻になりました。7度目の握手はムッタからです。
「忘れてた」と言い、握手をするために戻る程、2人の間では習慣になっているようです。
ムッタが今までと違って、「お互いに頑張ろう」というような意味を込めて握手をしたのは面白い変化ではないでしょうか。、3次審査で結束したメンバーから選ばれて最終審査へ進めたことが、宇宙飛行士になることへの覚悟を一層強めたのかもしれません。

・8度目の握手

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小山宙哉「宇宙兄弟」8巻・

 さらに間が空いて8巻です。晴れて宇宙飛行士候補になることの出来たムッタとケンジは今までで一番力強い握手を交わします。
ここも同時に手を差し伸べたと読みました。どちらともなく自然と握手をした、というのが自分の中ではしっくり来ます。

・9度目の握手

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小山宙哉「宇宙兄弟」13巻・

 9度目の握手は、飛びに飛んで13巻の巻末付近で交わされます。
宇宙飛行士候補から宇宙飛行士へ正式に任命された場面での握手は、2人の変わらない友情を示してくれています。握手の間隔が広くなったのは、1巻のようにムッタの仲間がケンジしかいない、という状況から大きく変化したからなのでしょう。この頃はケンジよりも新田にスポットが当たっていましたし、そもそもムッタの行く道がケンジとは別の、困難が多い道でした。
久々の握手は手がしっかり描かれている通り、ケンジからです。

 非常に長くなりましたが、16巻までに交わされた握手を全て見てみました。

 同時に交わされた握手を除くと、手を先に差し伸べた順を見ていくと、ケンジムッタケンジムッタ→……となっています。
 
 16巻では不成立のものも含め、3度の握手が描かれています。
この順番が、13巻のケンジから続いて、ムッタムッタ(不成立)ケンジとなることで順番がしっかり守られたと読むこともできるのではないかなというわけです。
 先に述べたように、ムッタとケンジが逆の立場でも握手は不成立だったに違いありません。では、なぜ連続でムッタからの握手が続けて描かれたのかを考えた時、答えとしてこういうことも考えられるのではと思いました。
もちろん、ムッタから差し伸べた手が一度目は取ってもらえたのに、二度目は取ってもらえなかったことの衝撃が一番でしょうけれど。

 ただ、作者のこだわりとして「握手のシーンにおいて、手を先に差し伸べる順番をケンジとムッタが交互になるように描いている」のではないかと考えると、成立しなかった握手の意味合いが更に強くなった気がします。

 16巻の中で、ムッタとケンジは和解することができました。が、その握手がどういうものだったかはあえてここでは書きません。オチは言ってしまっているようなものですけれど。
ただ、作品を通して印象的な握手がいくつもある中で、16巻の三度目の握手はどれにも負けない力強さなのではないか、ということは言いたいです。
 この更新のために最初から読み返して、ムッタとケンジの友情を再確認することで「宇宙兄弟」がもっと好きになったのでした。

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