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鬼頭莫宏「なにかもちがってますか」1巻

「一社くんの言ってること何となくわからなくもない気がするけど なにかまちがってると思う」

 これぞ鬼頭先生の本分。非日常的な力を得た少年と、その力を使って世の中を正そうとする少年の"間違った"物語「なにもちがってますか」1巻。危険な力を手にして、中学生くらいの不安定な少年少女が力に陶酔し、翻弄されるというのはいつものことですが、今回は破滅に向かう物語のような気がして今から恐ろしいです。しかし、惹きこまれてしまうのがそれこそ鬼頭作品の恐ろしさであり、魅力でもあるのだなとこの作品を読んで再認識しました。

 作品のタイトル「なにかもちがってますか」とは、主役2人の行動が間違っていることを"もちがって"いるというように表しています。少しだけネタバレをすると、主人公の能力がたった一文字の"入れ替え"と結びつきが強いので読み終わってみると「そういうことなのか」と思わずにはいられない"巧いタイトル"であるなと。
 それと関連して、サブタイトルの"入れ替え"は見事です。3話と6話はサブタイトルの中だけで交換が成立していて、特に6話「雨降って死がたまる」は濁点の交換でとんでもなく恐ろしい言葉に変化しており、まるで、わずかな力にも危険が孕まれていることを象徴しているようです。
 他のサブタイトルも似た文字への変化であったり、同じ行内での変化であったり、同じ音(例えばア音からア音への変化)であったりと、割と予想しやすいものになっているので、何がどう変化したのかを考えるのもまた一興かなと。それに、2巻以降のサブタイトルのどこかと交換になっているかもしれない(エピソード的にも対比になっているかもしれない)と予想しているので、どこでパスが発生しているかも気になります。
 ただ、文字通り元の文字と交換になっている可能性の方が高くて(というか作中の能力に則るならこれ以外ありえない)、「なにかもちがってますか」の"も"と交換になっているのは、そのまま"ま"になりそうな。というのも、「なにかまちがってると思う」と日比野が言っているのを見て、「なにか間違ってますか?」に対する「そう思います」であるのかなと思えたからです。
 ここまで書いて気になったんですが「なにかもちがってますか」は誰に対する誰の問いかけなのでしょう。主役2人ともの言葉だとして、一社は最後まで進んだ時に己を反省するんだろうかという疑問が……。

 日常にはそぐわない間違った"力"を持つ日比野光が、間違った"心"を持つ一社高蔵に出会うことで、そそのかされて力を使ってしまい後戻りできない泥沼へ――とはならないのがこの作品。そそのかされはしますが、日比野が最大の間違いを犯すのが自分の過失であることから、一社の心の歪みを真っ向から否定できない、という展開は気付いた時にはゾッとしました。「君のせいで」と押し付けられないから最終的にどうなろうとも、日比野が最初に犯した"間違い"はどうあがいても日比野の間違いでしかないというのは残酷です。
 力と心は主役2人で分担をしているのに、力を向けるのが心が間違っている方の責任で無いというのは……何と言うかバッドエンド前提なんじゃないかなと。
 一社の言動の異常さだけが際立っているような気もしますが、彼は間違った"心"があるけれど全く"力"を持っていません。それに対し、日比野は間違った"力"を持っているのに加え、人間なら誰しも持っている"心"があるせいで、間違った心に変化し得る危険性があるため、個人的には日比野の行く末の方が心配です。何と言っても、鬼頭先生が中学生の心の不安定さを上手く描き出しているだけあって、1巻の時点で日比野の不安定さがしっかり伝わってきますから。
 とは言え、一社も心配です。「法律やルールを守れないやつが問題なんだ」というようなことを言っていますが、じゃあ「人を殺してはいけません」という法律を破ろうとしているお前はどうなんだ?となるので、結局は破滅しか待っていないんじゃないかと。人を殺すのが動機で強大な力をはじめから振るう作品は初なので、ある程度救われる要素のあるバッドエンドにすらならない気が……。
 で、何でバッドエンドが嫌だ怖いと言っているかというと、3話のラストのように2人共に愛嬌もちゃんとあるからです。特に、一社は大人びていて嫌な奴なのに子供っぽい一面を持っているのがここでわかってしまったので、酷い思想を持っている奴だ、なら最後は酷い目にあってしまえとは、既に自分の中では思えなくなっています。鬼頭先生のキャラクター作りって好かれるためというよりは必然性を持ってやっていると解釈しているんですが(だからこそ生々しいキャラが多い)、それでも憎めない部分が出来てしまって、まだどうなるかは全くわからないんですが、先のことを考えると辛いものがあります。

 あと、あんまり突っ込んだ予想ができる要素がまだないんですけど、チヅ的なアレで鶴里さんがどうも信用できません。日比野を利用するような気がしないでもないです。一社にナイフが向いてる時の冷静な顔が非日常側な気がするというのが唯一の根拠かな…?
 能力者が他にいるとしたら、彼女が第一候補になるのかなとかあきらかに思考があさっての方向へ飛躍しています。だって、鬼頭作品で清楚っぽい女の子が清楚で普通だったことってほとんど無いんだもの。

 2巻で話がどう膨らんでいくのか、特に超能力を持っているのが日比野だけなのかという点が気になりつつ、この破滅に向かう物語を恐れながらも楽しんでいきたいです。「のりりん」とは違うタイプの鬼頭作品で、オススメはしにくいですが、最初にも言ったようにハマった時の惹きつけられる度合いはかなり高いのではないかなと。

「なにかもちがってますか」 「殺す」と「コロす」PageTop「ぼくらの」 マチ編の隠喩の話

Comment

「うそつきはどつぼぅのはじまり」「雨降って、死がたまる」あたりはダブルミーニングだし、
「なにかもちがってますか」は「何かも、違ってますか」という風にも読んどいたほうがいいのかなぁと思いました。

「なにかもちがってますか」は「ま」と「も」がちがっている→まともじゃないの意味を含んでいるのかも

日比野の『間を入れ替える』能力は『間を変える』→『間を違える』→間違える
に繋がるのかな

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