〔短編集〕藤崎竜「WORLDS」



藤崎竜先生の名を聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?
大半の方は、「封神演義」でしょう。
言わずと知れた週刊少年ジャンプのヒット作品です。
全23巻という読みやすい長さで奇麗にまとまっており、ジャンプでは非常に珍しい「引き伸ばしが無く、円満終了した作品」の1つとしてファンは勿論、多くのマンガ読みの方から支持を受けています。
完全版は何と、あの「幽遊白書」よりも早く発行され、読者を驚かせてくれました。
表紙が素敵なんですよね。お金が貯まったら完全版に買い替えようという1つの野望があるのでとても楽しみです。

「サイコプラス」を思い浮かべた人。なかなかの通では?
たったの11回で終わったのが謎なんですが、語りだすと長くなるので今回はパスします。ひょっとしたら封神演義よりも好きかもしれん…
これの2巻には短編が2つ収録されているので、いずれレビューするつもりです。

「サクラテツ」がまっ先に思い浮かぶ人はいたでしょうか?
「フジリュー作品で最高のヒロインは富良兎だぜ!!」と思う方とはいい酒が飲めそうです。が、私の嫁なので渡せません(えー)
「waqwaq」も代表作とは言い難いかもしれませんが、ラストはスッキリしてていいですよね。フジリュー作品(連載)はラストがどれも爽やかなハッピーエンドで好きです。
え?ぐりりんパンチャー??そんなもの私は知らないな…

「あぁ、あの短編が面白い人でしょ?」と思った貴方。素晴らしいです。
「短編が面白いマンガ家」の1人としてまず藤崎先生の名を挙げたいくらいですし。
ハズレが無いと言えば大げさになりますが、普通の短編集とは一味違うのでオススメです!!
藤崎先生は、これからレビューする「WORLDS」の他にもう1冊、「DORAMATIC IRONY」という短編集を出しています。
どちらもオススメなんですが、後者のレビューはもうちょっとお待ちくださいね。

前置きはこの辺にして、「WORLDS」のレビュー、いってみましょう!!



いつも通り、短編集に収録されている作品を簡単に紹介していきます。

ハメルンの笛吹き



盗賊の頭・ジェンディには略奪の他にもう1つの日課があった。
彼はビオーランドーナという1人の女性に心を奪われていたのだ。
彼女は喋る事ができず、食事や自由に歩き回る意志を持たない病気のようなものを抱えていたが、そんな事は気にならないほどジェンディの中では大切な存在になっていた。
どんなに尽くしても笑いもしない彼女に決して失望せず、ジェンディはただひたすら彼女に会うのを楽しみにしていた。
だが、そんな日常も長くは続かなかった。
ある日、ビオーランドーナの弟のアクタズンが飛び込んでくる。「姉ちゃんを助けて!!」
町の子供をさらい人々を恐怖に陥れる「笛吹きの船」がどういうわけか彼女をさらっていったのだ。
怒るジェンディはアクタズンを連れ、船に乗り込む!!
2人は「笛吹きの船」からビオーランドーナを救い出す事ができるか?!


藤崎先生のデビュー作。
何というか…普通ですね。フジリュー作品の中で1番普通です。
ラストがちょっとクサいですが(笑)、この頃から既に暗めの雰囲気がありますね。


WORLDS



「オレ」は普通の高校生だ。
学校へ通い、友達もいて、そして…恥ずかしくて言えたもんじゃないが好きな子だっている。
不運な事に事故にあった「オレ」が目を覚ますと、そこには別の世界が広がっていた。
「アル」と呼ばれるオレ、暴漢のうろついている町、何もかもがおかしい。
そして…オレが15年も眠っていただって?あの平和な世界が…夢?
そんなはずはない…今まで生きてきた世界が現実のはずだ。オレは向こうの世界で生きてみせる!!
抵抗の先に手にするのは夢か?現実か?


前作の「ハメルン」と比べるとレベルが跳ね上がってます。表題作になってるだけあって、完成度高いです。
レビューを書くにあたってもう1回読んでみたんですけど、確かに夢の世界でのアルに名前が無いんですよね。
これが夢の象徴になってたり、いい夢からは覚めたくないとかそういう心理的な要素も重なってて深いです。私の考えなので当たってるかどうかわかりませんけど。
そしてラストが切ない…でも、このダークさが藤崎先生の味なんですよね。
この短編集の一押しです。短編好きの方はこれを読んでみてほしいですね。


THIGHT ROPE



人間がコンピュータに支配されている世界。
突然、事故が起きた。人間を管理する「管理者」の少女・ランジェルが逃げ出してしまう。
精神制御された「管理者」が脱走?彼女を造った博士は疑問を抱えながら、捕獲に乗り出した。
それと同じ頃、管理都市「N・Y」に2人の男・ディーンとトムが辿り着いた。
ディーンは「管理者」であった自分に嫌気が指し、この町にいる「賢者」に助言を仰ぎに来ていたのだった。
「これから出会う少女と共に西へ向かえ」という賢者の言葉に疑問を感じる2人だったが、予言の少女・ランジェルと出会ったディーンは確信する。
この子も自分と同じ「支配」からの解放を望んでいるのだと。
しかし、心を通わせたのも束の間、ランジェルは連れ戻されてしまう。
「自由」を掴む旅の邪魔はさせない!!ディーンの怒りが「支配」を超える!!


専門用語が多くて難しいです(笑)
正直、前半はストーリーを把握するのでいっぱいいっぱいです。
この「THIGT ROPE」は「心情」を意識して描いたとの事で、他の作品と比べるとたしかにメッセージ性が強いなと思います。
賢者のセリフにやたら説得力があります。本当にそうなりそうな気までしてきますよ。そのおかげで「自由」のくだりが映えてます。
もしかして、前半の詰め込みと後半のスッキリした展開を比較して「自由」の素晴らしさを表しているのかも?とか思いましたが、明らかに考えすぎですね。

続編の要望が多いらしいです。確かに謎が多くて続きが気になりますね。
が、発行されてから15年経ってるので…どうなんでしょう。


SHADOW DISEASE



弱い自分が嫌いで仕方ない少年・たぁくん。
「影の国へようこそ!」
この声が聞こえた日から、彼は自分が消えていくような錯覚に襲われていた。
その影響か、徐々に薄くなる影とは逆に、身体の色が濃くなってゆく…「このまま自分は影になってしまうのではないか?」彼はそんな思いを抱え始めていた。
ある日、いつも自分を支えてくれる美鈴さんに格好悪い所を見せてしまい、落ち込むたぁくん。
それが引き金となって「影の国」の扉を開いてしまう。そこにいたのは自分と同じ黒い人々ー!!
彼らの正体は一体?そして、たぁくんは自分に勝つことができるのか?!


また「ラストが〜」というと説得力ないかもしれませんが、この作品はラストシーンが違ったなら平凡な作品で終わっていたような気がします。
「THIGHT ROPE」よりも続きが気になるのは私だけ?


SOUL of KNIGHT



魔道師・アタウアルパの裏切りによって王が殺された。
駆け付けた騎士長のフィルは最後の抵抗をしようとするものの、王女・ミルキイユを人質に取られてしまう。
フィルは戦えぬまま殺され、王国はアタウアルパの手に落ちてしまう。
隙を見つけ、脱走したミルキイユは禁じ手によってフィルを生き返すが、どうも様子がおかしい。
騎士の鑑の様な以前の彼とは全く逆のダメ人間になってしまったのだ。
失望したミルキイユは、たった1人でアタウアルパの元へと向かう。それを遠くで見つめるフィルの心は揺れ始めていた…
フィルが騎士の心を取り戻す時、宝剣・ソウルオブナイトが再び輝く!!


こういう風に解説するとフィルの物語のようですが、ミルキイユが主役の様にも見える話です。彼女のキャラが明るくていいんですよね。
「デジタリアン」という作品もそうだと思うんですけど、こういう系統のヒロインは読んでいて非常に好感が持てます。ちょっと性質は違いますが、両キャラとも一生懸命さがよく表れてる点がいいなぁ、と。
それに加えて、ミルキイユはピンチなのに余裕があるように見えるんですよね(笑)

敵キャラのアタウアルパがこの短編集の中で1番人気があったらしいです(確かに濃い)。
何となくですが、申公豹に見えなくもないかなーと思ったり。彼の原型なんでしょうか?



という訳で全5編、紹介してみました。
「WORLDS」の完成度がお気に入りすぎて、他の作品の感想が上手く書けませんでした。反省…

藤崎先生の作品ではおなじみのあとがき「断崖絶壁今何処」はここからスタートしています。
今回は「もし読みきりの『その後』を描くなら?」という事で各作品の続編の構想が描かれて(書かれて?)います。
どれも気になるなぁ。この中だとやはり「無限大SD」が読んでみたいな、と思います。
藤崎先生、今になって続き描きたくなってないかな。

魅力が伝わったかどうかは微妙ですが、今回のレビューいかがだったでしょう?
しつこいようですけど表題作の「WORLDS」が一押しです。「こんな終わり方ありなんだ?!」と思いますよ。
比べて悪いんですが、最近のジャンプに載る読みきりと比べるとオチが強烈なんですよね。
毎回言ってる気がしますが、短編好きの方には絶対に読んでほしい1冊です。
傑作ぞろいの「WORLDS」、読まないのは勿体無い!!

絶版のようです。
中古では頻繁に見かけるので、気になった方は古本屋で探してみてください。




 
 

コメント

封神演義から入って短編を買った人

自分も「WORLDS」と「DORAMATIC IRONY」はそこそこに好きなんですが、2つとも読後の鬱度がすごいというか、怖いというか、バッドエンドぽいというか。
個人的に好きなのは「THIGHT ROPE」「SOUL of KNIGHT」「milk junkie」「異説 封神演義」ですかね。
封神好きなので「異説 封神演義」の面白さは別格ですが。ゾッフィー

DORAMATIC IRONYのミルクジャッキーのまとめ方はすごい。
あと、ユガミズムもお気に入りです

わたしも封神演義から入ったくちですが、短篇集大好きです。
一番藤崎竜らしさが発揮されてるのはこの短篇な気がします。
どうしても封神演義が有名なので(それはそれで嬉しいですが)あまり知られてない短篇集。これを機にもっとたくさんの方に読んで頂きたい一冊です。
あと短篇連載とかしてくれないかなぁと勝手に妄想してます笑

コメント返信

>no-maru さん

バッドエンドの2作品とも、主人公は悪い事をしてないんですよね。
そう考えるとあの救いの無さは怖いというか悲しいですね。
「異説」のスープーのインパクトは異常w


>名無しさん

「ユガミズム」、藤崎先生は気に入ってないみたいですねー。江頭みんがいいのにw
そのうち短編集2もレビューするので楽しみにしていただけたら嬉しいです!


>名無しさん

>これを機にもっとたくさんの方に読んで頂きたい一冊です。

そうなるとこの上ない喜びですね。なったのかな…?
短編連載は叶いませんでしたが、SQで連載決まったのでそれを楽しみにしましょう!

皆さん、コメントどうもでした!!
そして遅れてすいません。

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