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「惑星のさみだれ」 「願い事」と運命の強さの話

 「惑星のさみだれ」を読み返していて気になることがありました
それは2話の冒頭でノイのセリフです

「願いを一つ叶えてやる
お前にはその権利がある。指輪に運命を縛られし者よ

水上悟史「惑星のさみだれ」1巻 28ページ

 最後まで読んでも、作中で「指輪に運命を縛られし者」がどういうことだったのか説明はありませんでした。が、意識して読むと自分なりの答えが見つかった気がするので、つらつらと書いてみることにしました

○「願い事」と指輪

 まず前提から

 雨宮夕日をはじめとする「獣の騎士団」12人と、彼らが守護する「姫」朝日奈さみだれは、魔法使い・アニムスと戦う運命に巻き込まれたことへの対価として「願い事」を1つ叶えてもらえる権利を得ました
 ただし、これだと少し説明不足で、「魔法使いをやっつけて!」という花子の願い、「アカシックレコードを掌握したい」という風巻さんの願いが却下されたことから"精霊・アニマの超能力で何とか出来る範囲で"「願い事」を一つ叶える、というのが正しい説明になりそうです

 指輪については「惑星を砕く物語」への参加を強制される証としての意味以上は果たしていないように見えます。が、初期は指輪のデザインがアップになっていたので、この辺もよく読むと何か推察できることがあるのかもしれません。でも今回はパスします

 直前で書いた通り、指輪の果たす意味は「惑星を砕く物語」への強制参加の証であり、それだけで運命は縛られていますが、"願い事"でも運命が左右されているのは?と思い、少し考えてみました
すると、一定まとまったので「願い事」についてまとめました

○それぞれの「願い事」

 それぞれの「願い事」をまずは箇条書きします

・雨宮夕日:祖父の病気を治す
・朝日奈さみだれ:雨宮夕日との再会
・東雲半月:雨宮夕日へ身体能力,技の継承
・東雲三日月:女の子へあげるパンを出す
・南雲宗一郎:宝くじに当たる(詳細は不明 
・白道八宵:両親が最期を笑って迎える
・風巻豹:掌握領域の特殊強化
・日下部太朗:花子が受けた致命傷ダメージの回復
・宙野花子:凶悪犯罪者の自殺
・星川昴:雪待の幸せ
・月代雪待:昴の幸せ
・茜太陽:アニムスから借りた能力の変換拒否
・秋谷稲近:使用せず

 南雲さんの「願い事」は、個人的には「運気の上昇」と予想しています
お金が欲しいだけならそう願えばいいだけの話ですし、神余さんの応募した懸賞(南雲さん名義で応募)が当たった描写もありましたし

 一見すると法則性はありませんが、「惑星を砕く物語」と絡めるとノイの言った「運命」とやらとの関連性が見えてきます。今度はグループ化してみましょう

・直接、戦いに関連する「願い事」…東雲半月,風巻豹,日下部太朗,茜太陽

 風巻さん。泥人形を生成可能にする特殊能力で、特に終盤は大活躍しました。戦いにおける生存率を考えると運命はプラスに大きく動いています
 太朗。間に入らなかったら即死だったのか、太朗自身にしばらく意識があったので間に入らなくても花子は即死しなかったのかが永遠の謎ですが、無駄死にではありませんでした。生存した花子は最後の戦いでも活躍してます。太朗ではなく花子の運命がプラスに動いた、とも取れますが、"花子の「願い事」を受けて"発生したのが太朗の「願い事」なので太朗自身も運命を操作されてしまってます。プラスかマイナスかは選べませんが
 太陽。個人的に一番シビれた「願い事」です。結果的にアニムスの力を奪うことに成功しました。運命はプラスに動きました
 半月。「願い事」のシステムを知り、夕日とさみだれの企みを察知した時に"技を継承すること"を思いついたしまったのかなと。半月自身のことを考えると(最終巻で明かされた氷雨との関係を考えると)、運命がマイナスの方へ行ってしまっています

 それと「願い事」を使用しなかった師匠(秋谷稲近)ですが、あえてグループ化するならここかなと思っています
「願い事」を使えばまだ生存できることはザンが言っているので"戦闘中に使えたのにあえて使わなかった"とも読み取れる……というのは少し強引でしょうか


・「願い事」によって変化が起きた者…雨宮夕日、朝日奈さみだれ、宙野花子、星川昴、月代雪待

 戦いに何らかの影響が起きた者、とも変換できます。こちらは5名

 夕日。祖父の病気が治り、彼が長く生きられたことが夕日を精神的に成長させるきっかけを生みました。特に大きかったのはバビロン修得につながったことでしょうか。詳しい話はこの辺を見てください。巡り巡って戦いにプラスの影響をかなり与えている特異な例。運命はもちろんプラスに動いています
 さみだれ。夕日との再会≒縁の強化ということで、たぶん騎士の選定条件に大きく影響したはずです。そしてそれはさみだれの運命を救うことにつながりました。当然プラス
 花子。キルの説明不足のせいで唯一、命を奪うことに「願い事」を消費してしまいました。それによって死亡率が上昇したことは作中で語られています。彼女の「願い事」があったからこそ、運命が悪い方へ動くことがある、というのを理解し、半月も分類することができました
 昴と雪待。お互いに相手の幸せを願っています。これって結局は巡って自分の所へ戻ってきている気がします。親友が死んでしまえば幸せとは遠ざかってしまいますから
 

・一見すると関係なさそうで、実は運命が動いていそうな「願い事」…南雲宗一郎、白道八宵

 大人2人
 南雲さん。「運の上昇」と仮定した場合になってしまいますけど、戦闘にも生きてくるのではないかなと
 白道さん。昴,雪待と同じ理論で、娘がある日急に原因不明で死んでしまって、最期を笑って迎えられるのか?という話になるので、多少なりとも本人の運命にプラスの影響があるはず


・運命に何の影響もない「願い事」…東雲三日月

 ここが言いたかっただけです。三日月だけ「見ず知らずの女の子へパンを与える」という全く自分自身に何の影響がない「願い事」の使い方をしています。運命がプラスにもマイナスにも動いていない、つまり、唯一「願い事」に運命を縛られていない者ではないでしょうか
 
 ここで、やっとムーの言いたかったことが理解できました

 「三日月。子供にパンを与えるために命掛けの報酬の願いを使えるあなたは、心も肉体も運命も誰よりも強い

水上悟史「惑星のさみだれ」10巻 148ページ

「惑星のさみだれ」 "ライバル"東雲三日月について
 この更新では「自発的な覚醒が運命の強さの象徴」と言ってます
が、ムーのセリフが、運命を動かしてしまう「願い事」を指していることを考えて、他の騎士たちが「願い事」でどう変わったのかと比較すると、三日月の運命の強さがわかる気がしました。夕日なんて補正受けまくりですから
 つまり、最後に夕日に勝って美味しいところを持っていったのが「運命の強さ」ではなく、「願い事」の力を借りずに自分の力だけで戦い抜き、最後に(運命にプラスの補正を受けた)夕日に勝って美味しいところを持っていったのが「運命の強さ」ということだと解釈しました。今まで思っていたのより三日月が数段すごいという話です

 というわけで、「願い事」と運命の話と見せかけて、少し上に貼った三日月の話を補足する更新でした
 ノイの言った「運命を縛られし者」を"「願い事」で運命を左右されたもの"にすり替えて話してしまったので、縛られるという表現と合致しているか微妙になってしまいました
が、水上作品的に考えると「願い事」で運命の方向性を"自由"から"プラス"もしくは"マイナス"の一方向、もしくは固定された所へ「縛っている」と読み取ると筋が通らなくもない…かな



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「惑星のさみだれ」 "ライバル"東雲三日月について

【2010年12月更新の再掲です】

 「惑星のさみだれ」の主人公・雨宮夕日の仲間でありライバルでもある東雲三日月についての話。
9巻時点までだと「ライバル」というポジションで見た場合、イマイチよくわからないキャラクターだったんですが、最後の最後で腑に落ちたので、自分なりにまとめてみます。

○壁として立ちふさがる「ライバル」

「お前が お前の運命が兄貴を殺したんだからな
お前は兄貴より運命的に強い
兄貴より強いお前を越えればいいんだ
兄貴の運命に背中を押されお前は生きた
お前の運命が兄貴を喰ったんだ!! 」

水上悟史「惑星のさみだれ」2巻 199,200ページ

 東雲三日月が「惑星のさみだれ」に登場したのは2巻の終わりです。
彼は、夕日を救う代わりに命を落とした東雲半月の弟であり、超えられなかった兄よりも「運命的に強い」と認めた夕日を標的に定め、また、ヒロインのさみだれに恋をすることで「ライバル」としてのポジションを確立します。
しかし、三日月はまず、戦闘の意思を見せない夕日ではなく南雲に挑みます。

 兄貴よりも「運命的に強い」男が乗り気ではなかったことが大きいとは思うのですが、たぶんこの辺りの三日月は兄を失ったことで動揺していた部分が少なからずあり、また、「強い大人」(≒いなくなった半月の代わり)と戦うことで自分の強さを証明したかった部分もあるのかなと。
(南雲に敗北した後、3巻50ページで「遊びだけど大マジメだっつーの」と言っており、決してふざけていただけではないのがわかる気がする)

 中盤からの夕日が、序盤からは想像もつかない良い笑顔を見せて周りをいい意味で変えていくという本質を見せたように、三日月も中盤からの良い兄貴キャラが本質だったと考えると、序盤の不可解な行動は納得できるのかなというのが今の自分の考えです。
「ライバル」として夕日と対比されているなら、序盤はまだ「子供」であり、未熟な部分を多く露出させていたのは意図的なのでしょう。たぶん。

6巻39話で11体目が半月に化けた時の反応がヒントかな。夕日より先に攻撃を仕掛けています。
 尊敬して止まない兄に化けた泥人形の「顔」を蹴る三日月はどういう想いだったのでしょう。


「あらら。弱っ
(中略)
なーんか、心技体がバラバラっつーか… 」

4巻 138,139ページ

 少しの後に、夕日は天才・半月の武術を継承したのを知り、それがきっかけで三日月と一対一の決闘をしています。
初めての2人の対決は、心技体がバラバラの夕日に、既に「自分の戦い方」を会得している三日月が圧勝するという結果に終わっています。
(ここで三日月は「ゆーくんはゆーくんなんだから」と助言をしており、これが後の7巻の再戦や、VS半月での「でもそれはあなただ。ぼくは~」というセリフからわかるように、夕日にとっての「自分の戦い方」を確立させたきっかけとなっているのが熱いのですが、それはまた別の話。)

 技術、体術は互角なのに、心の部分において夕日は「弱っ」と言われるほど劣っていました。
せっかく三日月がライバルとして出てきてくれたのに、序盤は夕日の方が追いつけていません。
これをきっかけに夕日はどんどん強くなり、三日月もまた強くなっていくのですが、これからしばらくは2人の決闘はあまり描かれません。4巻では他の騎士団の掘り下げに充てられていますし。
 そう、この時点では夕日が弱いため、お互いに高め合う関係ではない「ライバル」ではないんです。
2人とも半月の影を追っているとでも言えばいいのかな。
夕日は見ればわかるし、三日月もライバル認定した辺りでは完全に捉われていますし。
まあ、一緒に酒飲んだりして仲間としての付き合いはかなり多いんですが。


○東雲半月を通じて

 5巻序盤(物語中盤に入った頃?)の三日月の行動は、戦って面白そうな敵の方へ1人で勝手に行く、戦いを「遊び」感覚で行うというようにまだ未熟な部分が抜けていません。
そんな中で

101201-2.jpg

5巻 68ページ

 半月譲りの「方天戟」を発動させた夕日を見た時に三日月はこのような反応を見せています。
これが後の方天陣のきっかけになっているんですが、この表情を見るに、徐々に強くなる夕日に対して思う所があったのかもしれません。
「ライバル」として夕日を見ているのは、ざっと見た感じ5巻ではここだけでした。

 この後、夕日はアニマ覚醒(さみだれのわずかな変化?)に手を貸しており、自身の精神もさらに一回り大きくなっています。
が、やはり2人の直接的な接触はメシ、飲みであり、戦いを通してのやり取りは少ないように思えます。
幻獣の騎士となった南雲に関心を寄せるという共通点は一応ありましたが、目的の為にどうしても強くならなくてはいけない夕日と、強くなれるだけ強くなることが目的の三日月では、線が交わることはそうそう無いのも当然と言えば当然なのですが。
それに、まだ三日月に対して闘志をむき出しにして来ない夕日は眼中には無いのかもしれません。

「アニキ…こいつぁあんたの発想だろ
ゆーくんを経て、受け取ったぜ!!
戟軍・封天陣ッ!! 」

6巻 80,81ページ

 この技が初登場した戦い(VS9体目)において三日月の戦い方が転機を迎えたように思えます。
利己的な戦い方をしなくなったと言えばいいのかな。
兄が遺した物をようやく受け取り、三日月も夕日のように一回り大きく成長したと解釈できるのかもしれません。

 転機を迎えたのは間違いないんですが、この変化は急すぎないか?というのが疑問でした。
しかし、前回の戦いで南雲の「守る姿」を見ていたことで感化されたと考えたらどうだろう、と書きがながら思いつきました。
これが真実ではなかったとしても、ここでの三日月覚醒で重要な点は、この戦いで日下部太朗の死亡を知る前であることかなと思います。
つまり誰の死をきっかけにするでもなく自発的に変化を迎えたのが、三日月が誰よりも「運命的に強い」ことの証明の一部になっているのかもしれないなと。
「ライバル」の夕日は半月の死がきっかけであったことを考えると、こういう部分でも対比になっているのかも。
(本心は「幻獣の騎士のそーちゃんを助ける俺ってつえー」とか、そんなことだったのかもしれませんが)

 戦い方の変化がわかるのは、9体目再戦時の「おれが切り込んで目を引く。後は任せるぜ(6巻 177ページ)」というセリフなんかを見ると一目瞭然です。
自分が一番活躍しようとする以前の三日月では無くなっています。
ただ、ここは太朗死亡後なので判定としては微妙なんですけど。でも、最初の変化が死亡前に見られたのは夕日と比較する時に重要な要素にはなりそうです。

 という感じで、中盤では夕日と三日月が切磋琢磨する様子はあまり描かれていません。
「獣の騎士団」というコミュニティについて掘り下げるターンであったのが大きいところですが。
2人とも成長しているのはバッチリ伝わってきますし、自分でまとめてみて三日月の運命的な強さが描かれていたのは大きな発見でした。


○二度目の決闘、そして終わる1つの「物語」

「三日月。今週末やろうか」
「何を?」
「決闘。二度目のな」

7巻 35ページ

 三日月の話で、半月の偉大さを改めて知った夕日は二度目の決闘を挑みます。
結論を言ってしまうと、今回は心技体が揃った夕日が勝利するのですが、気になったのは決闘前の以下のシーンです。

101201-4.jpg

7巻 38ページ

 何度も戦わなくてはいけないと言い、ここで三日月は夕日にとっても「ライバル」になります。
が、もう戦いは大詰め。これからの後、2人が決闘する余裕はなく「惑星を砕く物語」は終了してしまいます。
一体このセリフは何だったのかと。
そして、「ライバル」である三日月がVS夕日に参加すらできなかったのはどういうことなのかと、雑誌掲載時には思ったものです。

 一方、兄貴キャラとしての三日月は7巻以降で不動のものとなります。
昴から好意を寄せられているので、矛盾コンビと一緒にいるのが多くなったことに加え、太陽との接点が増えることで「お兄さん」的な役割をしていることが多くなりました。
作中の言葉を借りるなら「大人」として子供組を一番近い位置から引っ張っています。
夕日と一緒にWヒーローとなるシーンなんかは、序盤の狂気はどこへやらと言った感じです。
戦闘においても、夕日が1対1で半月を倒した一方で、VSでは11体目矛盾コンビとの合体攻撃を編み出す、VSアニムスでは身体を張って子供達の盾になるというように、単体での活躍、特に撃破の役割が回ってきませんでした。

 それと、ライバルであることを念頭に読んだ際に気になったのが以下の点です。
「ライバル」の内訳に「さみだれに惚れた者同士」という項目があり―

101201-1.jpg


 思いがけず出た一言は夕日が肯定するほどでした。
つまり、夕日と三日月は、さみだれの同じような部分(危うい強さであったり、アンバランスさなのかな)に惹かれています。
それを証明したにも関わらず、さみだれが地球破壊の野望を抱いていることに他の皆と同じように気づいていなかったのが疑問でした。
ライバルなのにそれでいいのかと。
何かパっとしないキャラクターだったなと思ったわけです。
しかし……


○生涯の「ライバル」

 ようやく本題。
「東雲三日月は雨宮夕日のライバルである」と考えた時に、足りていない点があることは見逃せません。
これからも何度も戦い続けると言ったのは何だったのかと。
「殺されてもいい」とまで言いながら、さみだれのことを全く理解できていなかったのは何故なのかと。
しかし、「惑星を砕く物語」が終わり、エピローグに突入した時に、自分は東雲三日月というキャラクターを軽く見ていたことに気が付きました。

101201-3.jpg

 作品ラストバトルはまさかの「ライバル」の戦い、雨宮夕日VS東雲三日月でした。
三日月が微妙な扱いだったのを受けていたのが気になり、雑誌掲載時から「もう1回くらい活躍が残っていたらいいな」と思ってはいたのですが、最後の最後でこれは予想外であり、この展開を読んだ時に三日月への認識が180度変わりました。
自分の読み方が「惑星を砕く物語」という枠内でしかキャラクターを見れていなかったのだなと。

 また、この戦いの中で三日月はあるキャラから「肉体も心も運命も誰よりも強い」と言われます。
(「運命が強い」というのはこの更新で最初に引用した部分(三日月のセリフ)を受けての言い回しでしょう。こんな所まで拾ってくるのかと驚きはしたんですが、それはまあいいです。)
このセリフを受けて少し話を遡り、VS夕日の1シーンを見てみます。
アニムス戦で大ダメージを受けて既に戦えなくなった三日月が、夕日を阻止せんとする南雲と白道さんを見て言ったセリフがこちら。

101201-5.jpg

さみだれは視界に入っていない

 ここで三日月が言ったのは「夕日(と姫)を止めるのは自分でありたかった」というものでした。
(「あそこにいたかった」と言い、見ている先に姫はいない=姫の側に付きたいとは全く考えていない)
たとえ姫に惚れていても、あくまで「止める側でありたい」と思えるのが三日月の強さなのだなと。
「楽しそう」と言っているので、夕日と戦うのは自分であるとも受け取れるんですが、これは三日月の心(あるいは運命)の強さを象徴したシーンの1つなのではないかと解釈しました。
上手くは言い表せないんですが、主人公、ヒロインに次ぐ3番目のポジションにいる味方キャラクターが、ここまで真っ直ぐな奴でよかったとかそんな感じです。

そして、戦いの結末や、(何気に「フェイントに弱い夕日」の伏線を拾っていたりする。夕日の戦闘スタイルである「思考」の隙を突いたとも言えますが)
最終回で明かされた「対戦成績」まで見ると、三日月は「惑星を砕く物語」におけるライバルキャラではなく、雨宮夕日の人生におけるライバルであるんだなということがわかるわけです。
「何度も戦う必要がある」と言ったのは人生単位の話で、別に1つの大きな戦いの中に限った話ではなかったのだなと。
この2人の「生涯のライバル」の関係があることで、最終話の「ぼくらの人生は続いている」というモノローグの説得力が段違いだと思いますし。
(「これが無かったら説得力が無いのか」と言われれば、そんなことはないんですけど)

 多くの伏線回収がある「惑星のさみだれ」の中で、(連載中ずっと気になっていたのもあって)この2点の繋げ方が一番印象に残っています。
「何度も戦う必要がある」と事前に言ったくせに肩透かしだと思われたのが、実はそれが「これからの物語」における要素だったのが意外であり、こんな繋げ方があるのかと感心しました。
もっと言うと、この点が引っ掛かったからこそ、自分は最後の最後で三日月を大好きになれたんだと思います。


 長々と書いてきて言いたかったのは三日月が大好きになりましたということです。
(この気持ちのまま最終話読み返したら、髪型で連想させる人物がいて、更に好きになりました。)
ラスト数話で三日月は自分の中では、ライバルとしてこの上ないキャラになりました。
「惑星のさみだれ」が終わっても彼らの人生は続いていくんだなと思わされる最終回だったんですが、それ以前の描写も含めて考えると、東雲三日月が作中で一番それを体現してくれているのではないかなと。
物語ではなく人生のライバル。東雲三日月は素晴らしいキャラクターであると断言します。

「惑星のさみだれ」 夕日の成長と掌握領域の関係(3)ノイの幻獣化

「惑星のさみだれ」 夕日の成長と掌握領域の関係(1)方天戟
「惑星のさみだれ」 夕日の成長と掌握領域の関係(2)バビロン

 夕日の成長と能力パワーアップの話もこれで最後になります。
続きものになっていますので、ぜひ前の2回を読んでからこれを読んでください。

 最後は10巻のVS朝日奈さみだれで発現した、ノイが黒龍(インビジブル)になった=幻獣化した現象についてです。
まずは能力原理の説明。獣の騎士団の騎士を幻獣化させる能力は精霊(プリンセス)・アニマが所有しています。おそらく彼女の持つ力の一端を分け与えるというもの、のはず。作中では詳しく説明されていないのですが、各段にパワーアップしているのは間違いないです。
幻獣は霊馬(ユニコーン)、黒龍(インビジブル)、神鳥(フレスベルグ)の三匹であり、「幻獣の三騎士」という呼称から、アニマが力を与える限界が最大三匹ということだったのでしょう。これもたぶんですが。
 
 しかし、夕日はさみだれとの対決において、アニマの力を借りずにノイを幻獣化させることに成功します。
本人が驚いていることから、意識的に獲得した能力ではないものの、今までの原理からいくとどこかで条件を達成したから発現した、と見ることができます。
条件を再確認すると、
1)身体的に強くなっていること
2)強烈な体験を経るだけでなく、それを消化して精神的に成長を遂げること
の2点です。
1点目は幻獣の騎士2人(南雲と白道さん)に1人で挑んで勝利していることで達成していると言えます。また、バビロン習得が祖父との和解を契機とするなら、あの半月にもタイマンで勝利しているのも強さの指針になるでしょう。
 2点目の精神的な成長ですが、これは単純に

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 さみだれへの想いと、自分が止めるという意志を示したこと、これに尽きます。
どちらも口にしたのは初めてのはずなので(さみだれを「あの子」として=女の子として好きと言ったのはたぶん初めて。魔王を愛しているとは言っていますが。)、この明確な意思表示は、夕日が「惑星を砕く物語」とさみだれへの様々な想いをしっかりと纏めた瞬間、つまり自分の中で消化して立ち向かう決意を完全に固めた瞬間なのかなと。

 この2点をクリアし、夕日はノイを黒龍にランクアップさせることに成功します。
方天戟やバビロンと同じで、対象となる相手の能力(もしくは特性)を自分の力に上手く変換しています。ただ、さみだれの持つ力=アニマの持つ力になるか、というと少々強引ではありますが。

 もう少しだけ。力の象徴"魔王さみだれのマント"と絡めて、実はもう少し前に条件を達成していたのでは?という話。

 夕日はブルース起動時にマントを自分の力として身に纏っています。
このシーンでマントが出ているのを見ると、ブルース起動の時点で既に夕日はノイの黒龍化が可能だったのではないかと思ってしまいました。強さも半月を倒していることから申し分ないですし。
ただ、さみだれ戦でふっ飛ばされてからマントを黒龍化のエネルギーに変換してようやく効力を発揮したとも取れるので、あまり説得力はないですけど。未来の夕日(の心)がマント化しているので、前借りしている可能性もあるのかな、とか。
 ただ、実はそれよりもっと前、8巻の口絵で

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 フル装備の夕日が描かれているんですよね。ブルース起動よりもっと前、それこそ祖父を許して半月を超えた時点=バビロン完成後すぐに黒龍化の条件は整っていたのかも。
この通りなら、祖父を許せたこと(自分の心が戦いを通して救われたこと)で、さみだれの心も変えられるとこの時点で確信したということなのかな。
どのタイミングで夕日がさみだれを止めると決意したかはまだわかっていないので、確信的なことが書けなくて申し訳ないです。

 最後になります。
今まで紹介してきた3つの能力獲得の布石が置かれた時(縁が発生した時)と、成長イベントの順番が、黒龍化する時の描写と合せて考えると面白いという話。
時系列順に並べると
1:幼い夕日、さみだれと出会う(さみだれの願いにより縁が発生)【黒龍化・布石】
2:夕日の父が死亡。祖父が激変し、夕日に"呪い"をかける【バビロン・布石】
3:半月が死亡。夕日のトラウマになる【方天戟・布石】
4:白道を救うため(ノイの願いを叶えるため)、半月の死を乗り越える【方天戟・獲得条件達成】
5:精神が大きく成長したことで"呪い"をかけた祖父を許す【バビロン・獲得条件達成】
6:さみだれを止める意志を示す【黒龍化・獲得条件達成】
こうなります。
方天戟バビロン黒龍化と、布石の置かれたのが遅い順番から条件を満たして能力を獲得しています。
 黒龍化の際の描写を見てみると

2011021.jpg

 方天戟、鎖、マントの全部を纏めて力に変換しています。
つまり、黒龍化=一番最初の縁を上手く消化したことによって、全部が夕日の力になったと読み取れるのではないでしょうか。
こうして全ての経験を自分の力に変えた雨宮夕日が言う「大人になった」は説得力があるなと、今回の更新をしてみて改めて思うのでした。
 
 バビロンの能力が鎖と似ていること、それとこの条件発生順と獲得順との関係が面白いなということで順番に紹介してみました。
3つ合わせるとだいぶ長くなりましたが、これにて終わります。


「惑星のさみだれ」 夕日の成長と掌握領域の関係(2)バビロン

「惑星のさみだれ」 夕日の成長と掌握領域の関係(1)方天戟

 この話の続きです。今回のバビロン編が書きたくて始めた話なので、さみだれ好きな人に面白いと思ってもらえれば嬉しいです。

 まずは能力の説明をしておきましょう。今回の更新タイトル等ではバビロンと略していますが、正式名称は掌握空域「天の庭(バビロン)」。
夕日自身による説明をそのまま引用します。
薄く広げた掌握領域の球で自分を包み、自己運動性能の加速強化補助と、他者の運動妨害を同時に行う。自分がどう動きどう補助するか、相手の運動をどう邪魔するか、一瞬たりとも考えることを止めては使えない能力!!
とのこと。まとめてしまうと自分が強くなって相手が弱くなる空間を作る能力みたいな感じです。
今回の更新は、このバビロンが実は作中のある要素と関係した能力であることに気付いたという話。

 前回の更新の後半で、次に夕日が獲得する能力は"鎖"と関係があるという話をしました。
「惑星のさみだれ」という作品、とりわけ雨宮夕日と鎖は切っても切れない関係にあります。しかし、その鎖は成長するために切らなくてはいけないものでした。

 まずは現実すら侵食する鎖(=祖父の呪いのイメージ)のおさらいです。
鎖は夕日が最初に獲得した方天戟のイメージよりも先に登場しています。それも、方天戟とは違って現実でも見えてしまうイメージとして。
「敵も味方もつくるな」「だれも信用するな」と、幼い頃から夕日に呪いを吐き続けた祖父の言葉が、作中序盤から夕日を苦しめていました。

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千切ってもらったのに……

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飛べない夕日

 さみだれが3話で鎖を千切ってくれていますが、それでも夕日は鎖に縛られています。
このシーンが意味しているのは自分で何とかしなければいけないということなのでしょう。
5話の川ジャンプでも「鎖が見えた」と言う夕日がいました。
また、願い事を叶えてもらい、祖父の命を救ってからしばらく見えなくなっていた鎖が、半月が死亡した後にはまた(本人曰く)「トラウマの象徴」として夕日を縛っています。今回再読して気付いたのですが、ノイが願いを叶えた直後に鎖を自分で切ったシーンってなかったんですね。というわけで、白道さんを救った時に夕日が自分で切った鎖は、あくまで半月に関わるもので、祖父と関係する鎖はまだ切ることができていないことがわかりました。

 では、祖父の鎖を切るとはどういうことなのか。どうやったら切ることができるのか。
「方天戟」習得=可視化できる成長と考え、今回も同じパターンであると仮定すると、起きた出来事をしっかりと受け止めて消化するということだと思います。あの時は、半月の死を受け止めて、しっかりと自分の感情を表現する=泣くことで、起きたことを自分の中で整理し(ノイの言葉を借りると)夕日は「強く」なりました。
 つまり、今回も夕日は祖父から受けた呪いを何らかの方法で消化しなければいけない、ということ。願い事で祖父の命を人知れず救うだけでは夕日を大きく成長させる要素にはなりませんでした。事実、夕日は願いを叶えた6話の中で「祖父を許したわけじゃない」と発言しています。

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 方天戟が発現可能になったまさにその回に、夕日は祖父と未だ向き合えていない描写があります。ここを乗り越えることこそがまさに次の成長要素です。
が、具体的な願望が無くては成長のしようがありません。祖父を許す=強くなる、では意味がわかりませんし。
(能力獲得の前提条件として、夕日が肉体的にも成長していることがありそうですね。前の更新で書き落としていました(方天戟獲得前に半月の技術を得ている)。すいません。)
 方天戟発動条件をクリアした時=白道さんを助けた時にも具体的な願望があったとするなら、「今度は自分が恩人(ノイ)を助けたい」あるいは「ヒーローになりたい」ということです。
今回は日下部太朗を救えなかったことから起因する「強くなりたい」が願望に当たると見て間違いないはず。そう、夕日はさらに強くなる必要がありました。
この時にアニマの力で強くなる可能性もあったのですが、夕日は白道さんに負けてしまい、幻獣の騎士にはなれませんでした。幻獣の騎士になる=超能力が強化される=掌握領域が成長する、という感じで夕日の成長とは別にパワーアップチャンスがあったわけですけれども、逆説的に考えると成長イベントをこなしていなかったから能力パワーアップができなかった、ともとれるのかな。
 身体には成長しているのは、三日月を決闘で破ったことで一目瞭然かなと。このシーンがあることから、方天戟獲得の時と同じように夕日自身のパワーアップは済んでいます。

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やっと向き合う2人

 長くなってきました。いよいよ祖父との和解です。
49話で祖父が唐突に亡くなってしまいますが、仲間との出会いを経て「やわらかくなった」夕日は祖父を許します。こうなったら許すしかない、とは本人の弁ですが、その直後の夢(?)における祖父との会話でようやく(文字通り)向き合うことが出来ていることから、仕方なしに許したわけではないのでしょう。夕日、成長しました。
鎖は結局どうしたかというと、切るのではなくぶん投げているのですが、3話とは違い夕日が自分で鎖と決別しました。
 ちょっとここで補足しておきたいのは、48話での風巻さんとノイとのやり取りから、祖父に呪縛を受ける前に戻ったような描写があったので、死をきっかけにしなくても鎖は外れていたのではないか、ということ。この辺は、こんなことがない限り夕日は祖父と会おうとしないから、直接対面させる方法として仕方なかったのかな。

 さて、そうして発動したバビロンですが、ここで思い出して欲しいのは能力説明にあった「他者の運動妨害を同時に行う」という箇所です。これって夕日を縛っていた鎖に似ていると思いませんか。夕日は祖父の呪縛にさんざん苦しめられていました。その経験を超えたことで、自分のものとして能力に反映できているのでは、ということです。
 東雲半月の方天戟と、夕日が獲得した力が同じものであるように、また、その経験を消化して自身の能力としたように、バビロンにも同じことがいえるのではないかなと。
夕日は自身を縛り続けた鎖を、そのトラウマを克服することで自身の能力に昇華し、相手(の自由)を縛る能力を得たと考えると、祖父との和解のタイミングと能力獲得のタイミングが上手く噛み合う気がするんですね。この説、どうでしょう。
 ただ、初使用持に「使う時が来た」と言っていたので、もう完成していたのかもしれませんが……。

 そういうわけで、方天戟と同じようなパターンの獲得条件と能力効果を持っていることから、夕日の能力獲得はパターン化しているんじゃないか、という話を思いついたのでした。
あと1回だけ、最後に残った「ノイの幻獣化」に続きます。キーワードとキーアイテムは言うまでもなく、さみだれと彼女のマントです。バビロンで言いたいこと言ったので最後書かなくてもいい気がしますが、せっかくなのでやります。

「惑星のさみだれ」 夕日の成長と掌握領域の関係(3)ノイの幻獣化

「惑星のさみだれ」 夕日の成長と掌握領域の関係(1)方天戟

 今回は「惑星のさみだれ」の話。
主人公・雨宮夕日が作中で獲得した3つの能力について、彼の成長と絡めて考えてみます。
まずは掌握領域から発展した1つ目の能力「方天戟」について。 

 「方天戟」は元々、犬の騎士・東雲半月のものでした。本来の形では攻撃力を持たない掌握領域を槍状に変化させ武器として使う、というもの。
東雲半月の編み出した「方天戟」が特別強力というわけではなく、犬の騎士自体が攻撃力の優れた騎士であることは9話でノイが語っていますし、花子が「勇者の剣」を発現させた41話でもアニムスの口から語られています。そのことから、歴代の犬の騎士は攻撃性能の高い掌握領域を発現させ、使用していたことになると思うので今回の半月もルドの手引きで発現させた掌握領域に「方天激」と名付け打だけなのかな。この辺の話はどうでもいいんですが。

sami50-3.jpg

 その「方天戟」、夕日は「強いもののイメージ」を描いた時に、姫(アニマ)やアニムスのようなデタラメな力よりもイメージしやすいという理由から想像して発現、獲得します。
ここで確認しておきたいのは、第20話「東雲兄弟と雨宮夕日」において、夕日が半月の死を乗り越えて確かに成長をしたことです。
これから後に獲得した2つの能力も夕日の成長と深く関わっているので、最初に得た能力が成長の先にある、というのは見落としてはいけない要素です。

 20話の時点で獲得条件は満たしていた、と仮定すると21話の冒頭が凄いことに気付きました。
「この空をぼくの庭にできる。この空を掌握できる」というセリフがあり、バビロンの伏線が貼ってあることは知っていたのですが、なんと扉絵にも仕込みがありました。

2011014.jpg

しっかりと掴んだ方天戟とまだ掴めない"鎖"

 この扉絵で、この時点で方天戟を獲得していた(=獲得する要素は揃っていた)ことと、次に獲得する能力=成長する要素の示唆がされています
 もう少し詳しく説明。魔王さみだれと夕日だけが立ち入ることのできる夢の世界において、方天戟は夕日の力の象徴として描かれています。(作中で初登場したのは実はこの扉絵だったということは今回更新するにあたって初めてしっかり確認しました)
ちなみに、方天戟が発現する31話の扉絵は「今まさに方天戟を掴まんとする夕日」です。こちらは作中とリンクしていてわかりやすいです。

 そして、ここでは一緒に"鎖"が描かれています。初期から夕日の精神を縛るイメージとしての鎖が、夕日の能力に関係する場面で描かれたということは、鎖が次の能力に関係してくるということ。
次の能力は掌握空域「バビロン」になるわけですが、今更になってようやく鎖とバビロンの関係性を発見したので次回更新の(2)で紹介してみたいと思います。
 
 本当は1回で済ます予定だったのですが、書いている途中に21話の扉絵での発見があり紹介したくなって少し長くなったので分割しました。続きます。

「惑星のさみだれ」 夕日の成長と掌握領域の関係(2)バビロン

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